病んだ心をつまびいて



「わかりました……けどその前に、私の質問に一つ答えてください」


『ああ、なんなりと』




「私のお父さんは……
いまどこにいるんですか?」





空気が数秒止まった気がした。



アズマさんは笑みを崩さない。


しかし一瞬だけ目を伏せたのを見逃さなかった。




『……申し訳ないけど、それは答えられない』


「そんな……なぜですか?
お父さんに口止めされてるんですか?」


『違うよ。けど、それを伝えるタイミングは今じゃない』


「どういうこと……ですか?」


『言葉の通りだよ。けど約束する、時が来たら必ずお父さんの居場所を教えるから』




アズマさんは力強く言った。




じわりと目の奥に熱がたまり、涙の膜で画面がにじむ。



まだ状況が飲みこめないし、信用もできないけど



もし本当にお父さんの居場所が分かるのなら──





「わかりました。信じます」





嘘でもよかった。
お父さんへの希望が見えたことがとにかく嬉しかった。





モニターを切り、駆け足で玄関に向かう。


ポケットには念の為に護衛用のハサミ。



おそるおそる扉を開けると、画面越しで見るよりも、うんと優しそうな青年が立っていた。




「ありがとう、茜ちゃん」




ザラつきのない声に名を呼ばれる。


その声は少しだけ、お父さんに似ていた。