─「なんだよ修羅場か?」
─「てか平石さ、昨日やばかったよな?男に連れ去られてるの、動画でまわってきたぜ?」
─「それ俺も観た。新山と変な男で平石のこと取り合ってるやつだろ?まじ映画かよ」
ひそひそと聞こえてくる話し声の中から、信じられないワードが耳に入ってきた。
え?……動画?
底冷えした空気が体内を充満していく。
─「茜すごいよね、新山いるのに違う男誑かしてたってことじゃん?しかも動画に映ってた男チョーイケメンだったし」
─「どーせ浮気したのバレて詰められてんでしょ?痴話喧嘩なんて教室でやるなってハナシだけど」
─「キスマやばすぎじゃん。そーゆーコト色んな男としてんでしょ。新山かわいそー」
─「かわいいとは思ってたけど、まさか茜が尻軽だとは思わなかったよね〜。あんまつるまなくて正解だったわ」
根も葉もない言葉たちが滔々と流れていく。
気づけば呼吸が荒くなっていた。
私はまだ誰にも真実を伝えてない。
なのに人は自分勝手に虚構と思いこみを絡め合い、真実として形を作っていく。
──「平石って、ビッチじゃん」
もう耐えられなかった。
弾かれたように教室を飛び出す。
「茜!」と仁奈の声が飛んできたけど、振り向く余裕はなかった。



