ほとんど無意識にイヤホンを着けていた。
暗い画面をもう一度タップし、音楽サイトを開く。
再生ボタン、そして、穏やかなイントロ。
鼓膜を撫でるのは
秋道さんの歌。
すべての元凶である人物の曲を聴いて癒されようなんてほんと滑稽。
悔しいのに、どこか諦めてる自分もいて。
純粋に心の底から彼の音楽が好きな私は、日常のあらゆるマイナスに溺れてしまわないよう、その声に音に、縋っていた。
もはや私の一部というか。
どん底に落としてくるのが変態モジャ男なら
それから救い出してくれるのは、表現者の彼であって
私という人間は、どこまでも秋道さんから逃げられないのだと、うっすら諦観が湧いているんだ。
淡くほろ苦いフレーズが流れていく。
秋道さんの書く歌詞には、端々に重たい感情が乗っている。
それがリアルで共感できると評判なんだけど
実際そのすべては私への愛なんだと思うと、胸がムズムズしてしょうがない。
しょうがないのに、癒される。
秋道さんのくせに。
1限が終わるチャイムが鳴るまで、私はずっと目を閉じていた。



