「秋道さん、まずは落ち着いてください。
私は平気ですから」
「ほんと?ほんとーに……?
だって茜ちゃんが泣くとこなんて見たことないし」
「平気ったら平気です。
まずは冷静になって話しましょう」
でかい体を無理やり屈ませて、もじゃもじゃ髪を両手で撫でてやる。
なんにも言わずされるがままの秋道さんは、しょぼんと尻尾を下げたわんこみたいだった。
ほぼお辞儀同然の体勢なので、ついでに謝罪の機会も設けてさしあげよう。
「秋道さん、ごめんなさいは?」
「ごめんなさい…」
「もう痛いことしない?」
「がんばる…」
「やきもちはほどほどに」
「むずかしい…」
「今回だけは広い心で許します」
「ありがとう…男前な茜ちゃんのお婿さんにしてください」
「さりげなく私欲を混ぜないでください」
うりゃっと軽く髪を引っ張ってから手を離してあげる。
「ぅ…いたいよ茜ちゃん、ハゲちゃう」
「おもしろいのでハゲてください」
「うえん、未来の旦那様にそんなこと言うなんてひどいよ」
かわいくもない嘘泣きをはじめるモジャ男を横目にスマホを確認。
こりゃだめだ、遅刻決定。
素早く仁奈にメッセージを送り、まだ懲りずに泣き真似を続けてるモジャの相手をすることにした。
数分前まで恐ろしい相手だったのに、ちょっと空気が変わればなんだこの有様は。



