「さすがにそろそろ出ないと、まじで遅刻しちゃうな」
スマホを確認して部屋を出る。
いつものごとく秋道さんからラブメールが
来てたけど、無視無視。
しばらく口なんかきいてやるもんか。
私と新山くんの邪魔した罰だ。
ローファーに踵を沈めた時、ふと秋道さんの声が脳裏によみがえってくる。
──茜ちゃんを殺すか
──まわりの人間を殺すか
「……」
まったく頭から離れてくれない、狂気に満ちた言葉。
蝕むような、断じてよそ見をさせないような。
呪詛にも近い彼からの愛。
ズキ…とこめかみに痛みが走る。
負けないって決めたのに、もうこんなに秋道さんのことで頭がいっぱいだ。
「くそ…ヤンデレ天パじじぃ」
悪態をこぼして顔を持ち上げる。
怖くない、怖くない、私は大丈夫。
胸に唱えて玄関のドアを開けた。
刹那、ぬうっと大きな影が立ちはだかってきた。



