「私、食べるのは大好きなんですけど自分で作るのは全然なんです。焦がしたり生焼けだったり……火加減とかタイミングがよくわからないんですよね」
「今度、和子さんから胡桃さんに料理を教えてもらう時間でも作ろうかしら」
「そういう花嫁修行みたいなのは時代遅れだって言ってるだろ」
壱世がいつもの呆れた声で言う。
「花嫁修行じゃないわよ。あなただって習ったことがあるでしょ」
「じゃあ壱世さんは料理もできるんですね」
胡桃の発言に十玖子は壱世の方を昼間と同じようにチラッと見たが、何も言わなかった。
「これ、ご飯に何か香り付けしてますか? お酒?」
「鋭いですね。炊くときにほんの少しだけ日本酒を入れているんですよ。すこし甘みも出ておいしくなるんです」
「へー、それなら私もマネできそうです」
胡桃はおいしいと思ったもの、気になったものはなんでも柚木に質問しては答えに驚いたり感心したりした。
「今日はなんだか賑やかで、おじいさまと壱世と暮らしていた頃を思い出すわね」
十玖子が目を細めて言うと、柚木もにこにこと頷いた。
「壱世ったら、おじいさまが亡くなったらさっさと出て行ってしまうんですものね」
「何度も言ってるけど、大学進学と重なっただけだ」
「そういえば、壱世さんのおじいさまも市長さんだったんですよね。いつ頃のことなんですか?」
「壱世の三代前だから……二十年くらい前までは在任していたかしら。もう随分前なのに、そのご縁で今でもときどき市のイベントやパーティーにご招待いただくのよ」
「二十一年前だ」
壱世が正確な数字を言う。
「え、じゃあもしかして……」
「今度、和子さんから胡桃さんに料理を教えてもらう時間でも作ろうかしら」
「そういう花嫁修行みたいなのは時代遅れだって言ってるだろ」
壱世がいつもの呆れた声で言う。
「花嫁修行じゃないわよ。あなただって習ったことがあるでしょ」
「じゃあ壱世さんは料理もできるんですね」
胡桃の発言に十玖子は壱世の方を昼間と同じようにチラッと見たが、何も言わなかった。
「これ、ご飯に何か香り付けしてますか? お酒?」
「鋭いですね。炊くときにほんの少しだけ日本酒を入れているんですよ。すこし甘みも出ておいしくなるんです」
「へー、それなら私もマネできそうです」
胡桃はおいしいと思ったもの、気になったものはなんでも柚木に質問しては答えに驚いたり感心したりした。
「今日はなんだか賑やかで、おじいさまと壱世と暮らしていた頃を思い出すわね」
十玖子が目を細めて言うと、柚木もにこにこと頷いた。
「壱世ったら、おじいさまが亡くなったらさっさと出て行ってしまうんですものね」
「何度も言ってるけど、大学進学と重なっただけだ」
「そういえば、壱世さんのおじいさまも市長さんだったんですよね。いつ頃のことなんですか?」
「壱世の三代前だから……二十年くらい前までは在任していたかしら。もう随分前なのに、そのご縁で今でもときどき市のイベントやパーティーにご招待いただくのよ」
「二十一年前だ」
壱世が正確な数字を言う。
「え、じゃあもしかして……」



