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「今号の反響、すごいぞ」

ベリビ編集部に久しぶりに梅島編集長の明るい声が響く。

壱世の表紙のベリビが刊行されて一週間。
評判は上々で、配布用に設置したラックからいつもよりも速いスピードで無くなっているらしい。
普段は配信初日にピークを迎えるWEB版のアクセス数もめずらしく右肩上がりのようだ。

胡桃はそれを聞いて、なんとなく誇らしい気持ちになった。

「橘の写真がナイスだったよな〜。子どもと笑顔のイケメン市長! 人気が出ないわけがない」
「あー、それなら俺じゃなくて江田さんの手柄っスよ」
橘が胡桃の方を指さす。
「江田の?」
「市長が子どもと遊ぶように仕向けたり、市長と親しげに話したり」

「ほー。なんだ江田、市長と知り合いだったのか?」
メロンパンにかぶりついていた胡桃は、急に自分に、それも壱世の話題が回ってきたのでゴホゴホと咽せてしまった。
必死でデスクの上のカップを手に取り、冷めた紅茶をひと息に飲む。

「全っ然、知り合いじゃないです! 取材で顔見知りになった程度です」
胡桃は首をぶんぶん横に振った。

「なんだよ〜知り合いだったらまた出てくれってお願いしやすかったのに」
「……また出てくれるっておっしゃってましたよ」

「おー! さすが江田! やるじゃん!」

ガッカリしたかと思ったら次の瞬間明るい表情になる梅島に、胡桃は苦笑いだ。