恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

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（『俺の仕草を真似しながら食事をするといい』って言われたけど）

「胡桃さん、メインは何がいいかしら？」
十玖子がランチコースのメニューを見ながら尋ねる。

「えっと……鴨胸肉のローストを」
普段なら明るい声で答える胡桃だが、壱世の話を聞いたせいで声に緊張があらわれる。

「俺も同じものを」
彼は胡桃に合わせて料理を選んだ。

「あら、他にもいろいろあるわよ？」
十玖子が壱世を見る。

「胡桃とは食の趣味が合うんだよ」
壱世が愛想よくニッコリと笑って言った。

食事が始まると、前菜、スープ、と胡桃は壱世を観察するように目で追いかけた。

（次のフォークとナイフはこれ、か）

若干たどたどしくはあるが、胡桃はなんとか壱世の仕草を真似できている。

（それにしても、市長の所作ってきれいだな。迷いがなくて堂々としてて。手が大きくて指が長くて……気品と色気がある）

壱世が自分が真似しやすいよう、わざとゆっくりと動いてくれているのもわかる。

「——胡桃さんはどうかしら？」
胡桃が必死に壱世の動きを目で追っていると、十玖子に質問されハッとする。
食事が始まってからこれでもう二度目だ。

「えっと、すみません。もう一度……」

自分の手元と、壱世を目で追うことに集中して話を聞いていなかった胡桃は、そこまで言って小さくため息をつくと、フォークとナイフを置いた。