恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

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三人が食事に訪れたのは、ノースエリアにある三ツ星のフレンチレストランの個室だった。

「どう見ても事前に予約されていたとしか思えないんだが」
「あなたの婚約者を招くのに、食事にも行かないなんて失礼でしょ」
「用意周到だな。感心するよ」

(またピリピリしてる……市長が言ってたことって本当なのかな)

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『あのばあさんは、君をテストしようとしてる』
十玖子がいなくなった応接間で壱世に言われた。

『テーブルマナーや細かい仕草をチェックして、俺、というより栗須家に相応しいかどうかを確認するつもりだ』
『え? 私テーブルマナーなんて全然ですよ』
胡桃は不安を顔に出す。

『ニセの婚約者だから、これで破談にするという流れでもいいんだが……十玖子さんの恩人でもあるからな。せっかくの良い印象を悪くするのも君に申し訳ない。だから——』