「私、胡桃さんにお礼がしたいわ」
祖母の提案に、壱世の眉が一瞬ピクっと反応する。
「そんな、大丈夫です。おばあさまの大事な時計ですし」
「おばあさまじゃなくて、十玖子って呼んでくれないかしら? 私も胡桃さんってお名前で呼びたいし」
「ばあさんなんだから、おばあさまでいいだろ」
壱世が少しイラ立ちを含んだような声で言う。
「あら、ひどいこと言うのね」
二人の間にピリッとした空気が流れる。
「あー……えっと、十玖子さん! お礼なんて結構ですから」
「そういうわけにはいかないわ。どう? よかったら、これから遅めのランチでも——」
「本人がいらないって言ってるんだからいいだろ」
壱世がより一層イラ立った声で、被せるように言った。
「あら、でも」
そう言って、十玖子は顔をクイッと胡桃の方に向け、壱世にもそちらを見るように促した。
そこにあったのは、『ランチ』の響きに目を輝かせた胡桃の顔だった。
二人の視線を感じて胡桃はハッと我に返る。
「決まりね。私、支度してきますから。壱世の車で行きましょう」
部屋に二人きりになると、壱世はため息をついた。
「君は本当に食べ物に弱いな」
「すみません、図々しくて……」
「いや、礼を受け取るだけのことはしているから、それ自体は良いんだが」
「何か?」
壱世はまた「はぁ」とため息をつく。
祖母の提案に、壱世の眉が一瞬ピクっと反応する。
「そんな、大丈夫です。おばあさまの大事な時計ですし」
「おばあさまじゃなくて、十玖子って呼んでくれないかしら? 私も胡桃さんってお名前で呼びたいし」
「ばあさんなんだから、おばあさまでいいだろ」
壱世が少しイラ立ちを含んだような声で言う。
「あら、ひどいこと言うのね」
二人の間にピリッとした空気が流れる。
「あー……えっと、十玖子さん! お礼なんて結構ですから」
「そういうわけにはいかないわ。どう? よかったら、これから遅めのランチでも——」
「本人がいらないって言ってるんだからいいだろ」
壱世がより一層イラ立った声で、被せるように言った。
「あら、でも」
そう言って、十玖子は顔をクイッと胡桃の方に向け、壱世にもそちらを見るように促した。
そこにあったのは、『ランチ』の響きに目を輝かせた胡桃の顔だった。
二人の視線を感じて胡桃はハッと我に返る。
「決まりね。私、支度してきますから。壱世の車で行きましょう」
部屋に二人きりになると、壱世はため息をついた。
「君は本当に食べ物に弱いな」
「すみません、図々しくて……」
「いや、礼を受け取るだけのことはしているから、それ自体は良いんだが」
「何か?」
壱世はまた「はぁ」とため息をつく。



