「すごくニコニコしてて、私の話も聞いてくれて。『櫻坂が大好きだけど、お花が咲いてない時はつまらないから楽しくして』って、無理なお願いをしたんです。それを聞いてくれたのかどうか、本当のところははわからないけど、その後しばらくして櫻坂でときどき市のフリーマーケットが開かれるようになったんです」
櫻坂はベリが丘のノースエリアにある桜並木だ。
「それ以来その市長さんもベリが丘も大好きになったし、親にも友だちにも、何度も何度もこの話をしてたんです。子どもに好かれるって、その子だけじゃなくてもっと大きな広がりや意味があると思います」
ニコニコとした笑顔で話す胡桃に、壱世はまた感心したような顔をする。
「ベリが丘が好きなんだな」
「はい。これでも大学は外に行ったんですよ。離れてみて、ますますいい街だなって思いました」
「その市長に会ったのって何年前?」
「えーっと、四歳か五歳だったから……二十三、四年前? のはずです」
胡桃の答えに、壱世は「やっぱり」とつぶやいた。
「何か?」
「いや、べつに」
彼はなにかに思い当たったようだが、教えてはくれなかった。
保育園の視察を終え、胡桃たちは市長室に戻った。
櫻坂はベリが丘のノースエリアにある桜並木だ。
「それ以来その市長さんもベリが丘も大好きになったし、親にも友だちにも、何度も何度もこの話をしてたんです。子どもに好かれるって、その子だけじゃなくてもっと大きな広がりや意味があると思います」
ニコニコとした笑顔で話す胡桃に、壱世はまた感心したような顔をする。
「ベリが丘が好きなんだな」
「はい。これでも大学は外に行ったんですよ。離れてみて、ますますいい街だなって思いました」
「その市長に会ったのって何年前?」
「えーっと、四歳か五歳だったから……二十三、四年前? のはずです」
胡桃の答えに、壱世は「やっぱり」とつぶやいた。
「何か?」
「いや、べつに」
彼はなにかに思い当たったようだが、教えてはくれなかった。
保育園の視察を終え、胡桃たちは市長室に戻った。



