恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

お遊戯を見た後は、みんなで園庭に出て遊ぶ様子を視察する予定が組まれていた。
壱世は園児たちが遊ぶ様子を、微笑ましそうではあるものの、離れたところから見ているだけだ。

「ねえねえ」
胡桃は砂場で遊ぶ園児たちに話しかけて、ごにょごにょと耳打ちした。

「わかったー!」

園児が三人、元気に壱世のもとへ駆け寄る。
そして、一瞬驚いた顔をした壱世の手を引っ張って砂場に連れてきた。

「しちょうさんもあそぼ」
「え」

彼は子どもたちをけしかけた胡桃に視線を送る。

「市長のお仕事に足りないのは〝遊び〟ですよ」
胡桃はイタズラっぽい表情で笑う。

「なかなかやるな」

壱世は観念して、子どもたちと遊び始めた。

「え!」

子どもたちは胡桃の想定を超えて、壱世を前にはしゃいでいる。
子どもの一人が泥だらけの手で、彼のシャツやズボンに触ってしまった。

(これはさすがにマズイかも。市長の高そうなズボンが……)

青くなって止めに入ろうとした胡桃を、壱世は「いいから」という表情と手で静止する。

「泥だんごでも作るか」
彼はしゃがんで子どもたちと目線を合わせた。

「あたしピカピカのおだんごつくれるよ」
「お、見せてくれる?」
「ぼくもつくれるー」

壱世のまわりに次々と子どもたちが集まってくる。
その輪の中心で、彼は頬に泥をつけた顔で優しく笑っている。

(これはちょっと……ヤバいかも)

思わずキュンとしてしまった胡桃のそばで、女性の保育士たちも色めきたっている。