ベリが丘市長としての壱世の公務は八時半から始まった。
副市長や秘書たちとの申し送りをメインとした朝の打ち合わせから始まり、地域のさまざまな団体との会議、また副市長との会議、そして書類の確認や捺印などの事務仕事をこなしていく。
(なんていうか……)
「絵面が地味っスね」
そうこぼしたのは橘だった。橘は二十六歳の若者で、人物を撮ることも多いベリビのカメラマンだ。
明るい茶髪にはふわっとパーマがかかっている。
他者とのフランクなコミュニケーションを必要とする仕事をしているせいか他人との会話の距離が近く、あけすけに本音を言ってしまう。
「ちょっと橘くん、市長に失礼!」
と、怒ってはみたものの、胡桃も同じことを思っていた。
今日見たのはライトグレーのスーツを来た壱世が、グレーの壁の室内で、ネイビーやグレーのスーツ姿の人物や書類を前に難しい顔で仕事をしている場面ばかりだ。
ビジネス誌ならそれで良いが、地域密着のベリビの読者層には喜ばれそうにない。
(パーティーの日はもっと笑ってたのに)
「地味といわれても、これが普段の私の仕事なので」
壱世は淡々と答える。
「せめて、市長の息抜きの時間を撮らせていただけませんか?」
胡桃は困り顔でお願いした。
副市長や秘書たちとの申し送りをメインとした朝の打ち合わせから始まり、地域のさまざまな団体との会議、また副市長との会議、そして書類の確認や捺印などの事務仕事をこなしていく。
(なんていうか……)
「絵面が地味っスね」
そうこぼしたのは橘だった。橘は二十六歳の若者で、人物を撮ることも多いベリビのカメラマンだ。
明るい茶髪にはふわっとパーマがかかっている。
他者とのフランクなコミュニケーションを必要とする仕事をしているせいか他人との会話の距離が近く、あけすけに本音を言ってしまう。
「ちょっと橘くん、市長に失礼!」
と、怒ってはみたものの、胡桃も同じことを思っていた。
今日見たのはライトグレーのスーツを来た壱世が、グレーの壁の室内で、ネイビーやグレーのスーツ姿の人物や書類を前に難しい顔で仕事をしている場面ばかりだ。
ビジネス誌ならそれで良いが、地域密着のベリビの読者層には喜ばれそうにない。
(パーティーの日はもっと笑ってたのに)
「地味といわれても、これが普段の私の仕事なので」
壱世は淡々と答える。
「せめて、市長の息抜きの時間を撮らせていただけませんか?」
胡桃は困り顔でお願いした。



