***

壱世がメッセージを受け取る三十分ほど前。

「とれた〜!!」
胡桃は叫ぶように囁いた。

随分前から感じていた誰もいなくなった気配を確信して、手を縛っている布状のものを取ろうと試行錯誤していた。
手を縛っていた布が取れると、同時に目隠しも外す。

(暗くて見えないけど……手首がヒリヒリしてるから、赤くなってそう)

胡桃は「はぁ」と安堵と不安の混ざったため息をつく。
そして、周りを見渡す。
暗くてはっきりとは見えないが、ガランとした倉庫のようだ。

胡桃はブルっと身震いをした。
十月の終わりの夜、それも屋外に近い屋内は肌寒い。それに、この状況にはさすがに恐怖を感じずにはいられない。

(ここ、どこなんだろう? ベリが丘だとは思うけど……)

目隠しはされていたものの車の移動時間はさほど長くなく、ベリが丘からは出ていなそうだ。

(みんなには……壱世さんには連絡がいってるのかな)
たまたま彼と約束をしていた日だったので、おそらく壱世は心配しているだろうと思う。

(外には見張りの人がいたりする……?)
そう思うと、迂闊に外に出ることもできない。

胡桃はまた小さくため息をついて、自分の腕を見た。