恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

***

午後七時。

(これは、かなりマズいんじゃ……)

胡桃は布のようなもので目隠しをされて後ろ手に縛られ、肌寒い場所の地面に座らされていた。
コンクリートの室内のようでツルツルとしてひんやりとしている。

心臓は嫌な音でドキドキしている。

「ちょっと短絡的すぎたんじゃないですか? 烏辺さん」
鹿ノ川の声がする。

「しかし、この女が市長とつながっていると言ったのはそちらでしょう」
「私は怪しいと言っただけで、なにも拉致しろとは……」
どうやら仲間割れしているらしいと会話でわかる。

「怪しいですよ。ただのタウン誌の記者が、市長の秘書が骨折した翌日にすぐ見舞いに行くなんて。少なくとも秘書と直接連絡を取り合うような親しさなんじゃないですか」
(この人だけさっきからやたらと怖いんだけど……)
飯桐で胡桃の背後に立っていた男だ。他の二人から〝アライ〟と呼ばれている。

「た、たまたま、取材の申し込みで電話したら事故で入院したって聞いただけです! 取材先の方が入院したなんて聞いちゃったら、お見舞いに行きますよ」

「……ほらアライ、お前はやりすぎなんだよ」
胡桃の言葉を聞いて、鹿ノ川が言う。