翌週金曜、午後三時。

胡桃は飯桐で、モヤモヤと考えるヒマもないくらい忙しく過ごしていた。

「次、季節の焼き物の撮影いきます」
座敷でカメラを片手に、橘が指示を出す。

「レフ板必要?」
胡桃が撮影の道具箱を見て言う。
「今回は使わないっスね。ライトずっとつけとくんで、それで大丈夫だと思います」

「あー! お鍋冷まさなきゃ! うちわどこだっけ?」
「その前に、こっちの画像チェックしてくださいよ」
橘が、カメラとケーブルでつないで連動させたパソコンの画面を見せる。

撮影したものがリアルタイムで写真向けの高画質のパソコン画面に映し出される。
それを見て、自分のイメージする写真が撮れているかどうかを今回のディレクターの胡桃が判断する。

「えーっと、お! いいね、さすが橘くん!」
「じゃあ次——」
「……なんだけど、念のため別の角度もお願い!」
「出た、念のため」
橘はため息をつく。
「だって誌面構成が変わることもあるんだもん、念には念!」

胡桃は写真のディレクションをしながら、撮影用の料理や小物の準備など、せわしなく働いていた。

「なんか今日、やたらと元気っスね」
橘が胡桃の様子を見て言うと、胡桃はニマッと笑う。

「今日は彼がご飯に連れて行ってくれるの」
「へぇ」

「だから撮影もテキパキ終わらせて、絶対残業ナシ!」

「いつもそのくらいしっかり働いてくださいよ」
「えー働いてるじゃない!」

橘のいつもの嫌味に口を尖らせても、すぐに口元がゆるむ。