恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

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「顔がニヤけてるわよ」
十玖子の声でハッとする。

「せっかく飯桐に取材に行くなら、来週は和食のマナーの復習にしようかしら」
「はい、お願いします」
胡桃はペコリと頭を下げた。

「ところで十玖子さん、木菟屋さんはその後どうですか? なかなか営業日に行けなくて」
「行くたびに女将さんと話しているけれど、まだ移転は決めかねているみたいね。それにしてもどうして急に移転するのかしらねえ? 理由だけはずっと濁されているのよ」
十玖子の言葉に、胡桃は内心ギクッとする。

「あら、何か知っているの?」
「え!?」
彼女はジッと胡桃を見つめる。

「い、いえ。べつに何も……」
口外するなと言われている以上、十玖子にも言うわけにはいかない。
しどろもどろになる胡桃に、彼女は軽いため息をつく。

「詮索はしないけれど、隠し事であまり思い詰めたりしたらだめよ?」
「……はい」
胡桃はお茶をすすった。