恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

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一週間後。

胡桃と橘は、ノースエリアにある飯桐の店舗を訪れていた。

「今日は失礼なこと言ったらダメだよ? わかってる?」
「わかってますよ。江田さんこそ、余計な心の声漏らさないでくださいね」
「あはは……気をつけます」

高級料亭の女将と料理長との打ち合わせに、二人はスーツ姿で臨む。
胡桃は取材交渉のために何度か足を運んでいるが、橘は今日が初の訪問だ。

「いらっしゃいませ」
着物姿の品の良い女性が出迎える。
この店の女将だ。

「本日はどうぞよろしくお願いいたします」
飯桐は二階建てで、すべて個室だ。
庭園もあり、景色を楽しみながら食事ができる。

「VIPの人は秘密の入り口から入れるらしいよ」
胡桃が橘にコソッと耳打ちした。

二人は営業時間外の店の座敷に案内された。

「建物の外観と女将さんを一枚、それから料理長はお顔は出さないということなので手元と料理、それから……」
胡桃が取材の計画を説明する。

「外観の写真なんですけどね」
女将が口を開く。

「十月の半ばから改修工事が入ってしまうので、その前にお願いできますか?」
「屋根の改修っておっしゃってましたね」
前回胡桃が訪ねた際に、女将が施工業者と話しているのを見かけた。

「……あ!」