恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

「だから、俺と結婚を前提に〝恋愛〟していただけませんか?」

「わ、私でよければ」
声が震える。

「胡桃がいい」

壱世は優しく唇に触れるようなキスをして、胡桃を抱きしめる。
彼の心臓の音が伝わって、目を覚ましたような胡桃の鼓動がどんどん速くなっていく。

「本当に、嘘みたい……」
またポツリとつぶやく。

「……この前のおでかけの日の夜からいっぱい、いろいろ考えちゃって」
壱世の胸の中で言う。
「いろいろ?」

「壱世さんとさよならしても十玖子さんたちとは会ってもいいのかな、とか。十玖子さんにベリビでマナー講座の連載でもしてもらえば会えるのかな、でも嘘ついちゃったから嫌われるかな、とか」
「それから?」

「壱世さんにまだ全然ベリが丘のこと紹介できてないから、また一緒におでかけしたかったな、とか。もう会えなくなっちゃうのかなって思ったけど、またベリビに出てくれるって約束してくれたから仕事だったらまた会えるとか」
胡桃は溢れる思いを吐き出すように語る。

「一生懸命、楽しくなるように考えたんです。だけど……」

胡桃は言葉を詰まらせる。

「壱世さんが他の人のものになっちゃうのは、どう頑張っても全然楽しくならなかったです」

胡桃の目から涙が溢れ、彼の胸元に添えた手にギュッと力が入る。