「お互いに契約書を持っていたから、彼女とは揉めずに穏便に婚約解消の話し合いをすることが肝要だった。そのためにはまず彼女に会えないことには話が進まなくて」
だからやっと連絡がついた香が怖がって逃げてしまわないよう、電話の声を優しくしていたようだ。
「それで先週やっと弁護士立ち会いで正式に婚約解消できたんだ。お互いに納得の上で」
胡桃は自分とは違う世界の話につい難しい顔をする。
「今日は今までのお礼だって……だから、今日で最後だと思ったんですけど」
胡桃は眉を八の字にする。
壱世はそんな胡桃を見て、めずらしく少し緊張したように小さく息を吸った。
「たしかに今夜で最後にしてもらおうと思って呼び出した。婚約者の〝フリ〟は」
「え……」
「今夜は、胡桃に結婚を申し込みにきたんだ」
予想外の壱世のプロポーズに、胡桃は黙り込む。
「胡桃?」
頭が真っ白になり、なかなか言葉を発することができない。
「え……?」
やっとポツリと声を出す。
「嘘……だって私、マナーは勉強中だし、知識なんて全然無いし、英語だってまともに話せないし、それに見た目だって全然」
心臓も状況が理解できずにおとなしいままだ。
「全然、市長が求めるスペックじゃ——」
彼に腕を引き寄せられ、唇を塞がれる。
だからやっと連絡がついた香が怖がって逃げてしまわないよう、電話の声を優しくしていたようだ。
「それで先週やっと弁護士立ち会いで正式に婚約解消できたんだ。お互いに納得の上で」
胡桃は自分とは違う世界の話につい難しい顔をする。
「今日は今までのお礼だって……だから、今日で最後だと思ったんですけど」
胡桃は眉を八の字にする。
壱世はそんな胡桃を見て、めずらしく少し緊張したように小さく息を吸った。
「たしかに今夜で最後にしてもらおうと思って呼び出した。婚約者の〝フリ〟は」
「え……」
「今夜は、胡桃に結婚を申し込みにきたんだ」
予想外の壱世のプロポーズに、胡桃は黙り込む。
「胡桃?」
頭が真っ白になり、なかなか言葉を発することができない。
「え……?」
やっとポツリと声を出す。
「嘘……だって私、マナーは勉強中だし、知識なんて全然無いし、英語だってまともに話せないし、それに見た目だって全然」
心臓も状況が理解できずにおとなしいままだ。
「全然、市長が求めるスペックじゃ——」
彼に腕を引き寄せられ、唇を塞がれる。



