恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

「今日で婚約者のフリは終わりですよね？　だからあなたの呼び方を〝市長〟に戻すのは当然だと思うんですけど……」

「なんで今日で終わり？」
胡桃には彼の質問の意味がわからない。

「だって……本物の婚約者の方が戻ってきたんですよね？」
胡桃の発言に、壱世はため息をつく。

「やっぱり何か勘違いしていたんだな」
「勘違い？」

「彼女とは先週正式に婚約を解消した」
「え？　なんで？」
話についていけない。

「だって市長の理想の相手で、この前の電話だって全然怒ってなくて心配してたみたいだし……」
「どこから話せばいいのかな」
壱世は頭を掻いて悩ましい表情をする。

「前にも言った通り、彼女とはお互いのスペックだけを重視した関係で、恋愛をしていたわけではないんだ。婚約するにあたって契約書を交わしていたような関係だ」
「契約？」
壱世は頷く。

ますます話についていくのが大変だ。

「パーティーから逃げた時点で向こうが契約違反をしていたんだが、こちらも実家の件の伝え方が微妙だったから、一方的に破棄するわけにもいかなくて」

壱世はまたため息をつく。