(む~~~~~~っ……)

その不満そうな言い方に収まりかけた怒りが沸点を突破したメルは、チタと素早く目配せを交わすと、両手ですくい上げるように彼の身体を放つ。

「チタ、自然の怒りを見せてやって!」
「ヂュアァァァァッ!!」

 チタはモモンガのように彼の顔にビタンと張り付くと、彼の身体中を走り回りながら、バリバリと引っ掻いた。

「うわぁぁぁぁぁぁっ、ちょ、これは自然じゃなくて、お前の個人的な怒りだろ! ああっ、服の中に入るんじゃないっ! おいメル、もうしない! しないからこいつにやめさせ……ひゃぁぁぁぁぁ!」

 情けない声を上げ、のたうち回るラルドリスを見ながら、メルは腕を組み冷ややかな視線でしばらく見つめ続けた。彼には魔女の機嫌を損なうとどうなるか、今後の為にも存分に思い知ってもらおう。
 たとえ王子様であろうがなんであろうが、乙女の純情を弄ぶ者には制裁あるのみなのだと。