助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 彼がぶちぶちと愚痴った名前に覚えがあった気がして、メルは受け取ろうとしたマッシュルームを落っことした。それは転がり草むらに姿を消してゆく。

「あ、あの……今、なんと?」
「遠慮しろと言った」
「……ではなくて……い、いえ、やっぱりいいんです」

 ここでその名前を聞くなんて、そんな偶然あっていいはずがないのだと、メルは無意識に話を切った。ラルドリスもあえて追求する必要はないと思ったのだろう、不思議そうに首を傾げた後作業に戻る。

「変な奴……。それより芋……せっかく洗ったやつが無駄になったじゃないか。なんかぬるっとして変だったが」
「ああ、あれは芋じゃなくてマッシュルームですよ。薄く切ったもの、食べたことありません?」
「はぁっ!? あ、あれがマッシュルームだと!? し、信じがたい。あんな得体の知れんものを俺は食わされていたのか!? な、なぁ……一体やつら、自然の中でどうやってあんな形で生えているんだ?」
「……ふふ、後で教えてあげます。だからほら、手を止めない」
「ちっ、絶対だぞ?」