助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 彼を王族と知ったので、内心ドキドキしながらメルはちょっとした言い合いを続ける。シーベルから窘められることも覚悟していたが、兄代わりの公爵殿はどうやら静観するらしくそっぽを向いて見て見ぬ振りだ。ならばとメルはぐんと胸を反らし、さらに言葉を足してやる。

「ここはお城の中ではありません。食べ物がなくなったら飢えて死にますか? 着るものがなくなったら凍えて死にますか? 食事を作るなんて、世に出れば十歳の子供だってやっています。あなたは王子として、これから大きなことをなさるのかもしれません。でもそれはまだ未来のこと。それまでは、今できることを努力されてみてはどうですか?」
「まるで母親のようなことをいいおって……」

 ラルドリスは綺麗な顔をぐっと顰めたが、それ以上口答えはしなかった。
 やれやれ顔でメルの隣にしゃがみ込むと、物珍し気に野草や茸を摘まみ上げてみる。

「やってみればいいんだろう。料理などやり方は知らん、どうすればいい?」 
「では、そのボウルの中に張った水で、取ってきた食材の土などを落としてくださいな」

 ふうと息を吐き、服の袖を捲ったメルが手本として野草や茸の土を洗ってみせると、ラルドリスは肩を押さえてぶるっと震える。