一体どれほどの血税が注ぎ込まれているのか分からないほどの美酒を、味わいもせず一息に飲み干し、ふたりはお互いを抱き締め合う。
 彼らはこれから、今以上の幸福が待つのだと信じて疑わない。そのために何年もの長い期間をかけ、後ろ暗い手でも惜しまず使い、形振り構わず政敵を退けやっとここまで段階を進めたのだから。
 後は時を待つだけ。最後にただひとつ残った不安要素を取り除けば、この国を手にするための計画は完成する――。
 彼らは夢にも思いはしない。
 それを覆しに現れるのが、過去に忘れ去った、たった一人の少女であるなどと――。