メルは外に出ると、家から少し離れた木陰にある小さな墓の前で、祈りを捧げる。これは彼女の祖母のお墓だ。少し前に眠るように亡くなってしまった。
 ナセラ森の近くには街がある。森の中では埋めても獣たちに掘り返されてしまうかもしれないから、メルは祖母の身体をそこまで運び、教会で焼いてもらった。そして骨だけを持ち帰り、埋葬した。
 祖母と血の繋がりはない。でも、たった一人の家族だった。
 なんにも知らず、役立たずだったメルに優しく、生活する術や、薬作り、魔法など色々なことを教えてくれた。
 だからいなくなった時は悲しかった。
 まるでこの広い世界に一人だけ取り残された気がしたのだ……。

「――チチッ……」
「おはよ、チタ」

 どこからか現れた一匹のリスが、メルの肩に乗って、慰めるように顔を擦り付ける。
 彼はシマリスのチタ。メルの唯一の友達である。
 以前、鳥にでも襲われたか、血を流して動けなくなっていたのを手当てしたら懐いてしまった。いつもは森で暮らしているが、こうしてメルが現れると、どこからともなく顔を見せお供をしてくれる。