「「御意にございます」」
「うむ、頼んだぞ」

 王子を案じていた配下たちは、その頼もしい顔にホッとして顔を見合わせた。
 ラルドリスはバルコニーに向かって進むと西の方角、城から伸びる――今もメルが進んでいるはずの旅路に向かって力の限り大きく叫ぶ。

「待っていろよ、メルーっ! それまで俺は、お前に相応しい男になれるよう、自分を磨いておくから!  そして次見かけたら、今度は逃がさない! 必ずお前を連れ戻してやるからなーっ!」

 数時間前に城を出た彼女の耳に、こんな声が届いているはずはない。
 でも……想いだけならば。絆を結んだ彼女になら。遠い距離に隔てられても何かが伝わっていると、今なら信じられる。

 (また絶対、会おうな!)

 そうしてラルドリスはバルコニーを後にした。
 配下たちと手を取り合い、意気揚々と政務をこなした日々の先に必ず待つ……本当に望んだ未来を掴み取るために。