しかし、彼女が命懸けで目の前に拓いてくれたこの道の大切さをラルドリスが分かっていないはずがない。すぐには無理でも、必ず彼は自分の力で立ち上がってくれるはずだ。
 
 そしてそれは、存外早く訪れた。

「……よし」

 ラルドリスはぐっと顔を擦ると、元気よく上げて言った。

「八年だ。それまでに俺は必ず王位を継ぎ、誰からも認められる立派な王となって見せる。それなら、誰も文句はないはずだ。いや、誰にも言わせない。そうして必ずあいつをまた、俺の傍に引き戻してやる……」

 ラルドリスは大事そうに手紙を封筒にしまいこむと、懐に入れた。
 そして彼らしい切り替えの早さでふたりの臣下に命令する。

「黙ってあいつを見送った罰だ。シーベル、ボルドフ、お前たちには新しく作る政府の中心となって存分に働いてもらう。異存は言わせない」