「新しい世代にこの国を引き継ぐ時が来たのだ」
 
 かつての友……上背の大きいボルドフの厳めしい顔が、彼を見下ろしている。
 ベルナール公爵の奥歯がぎしりと軋んだ。

「お前などに……なにがわかる」
「分かるとも。お前も、人生のすべてを賭けてこの国に尽くしてきた男だ。その仕事を誰かに譲り渡すのが恐ろしい気持ちは十分に分かる……。だが、誰しもに必ずいつかは決断の時が来る。お前にもあの御方の言葉を聞いて感じる物があったはず……ならば今をおいて他にないのだ。案ずるな、傍で陛下の姿を見守って来た儂が保証しよう。間違いなく、あの方ならば陛下のご意思を理解し、先々に伝えていってくれるはずだ」

 ベルナール公爵は、苦渋の滲む顔で振り返り、もう一度ラルドリスの顔を目に収めた。
 彼はそれを認めると、しっかりと頷きかけてきた。

 ――任せてくれ。お前たちの守ってきたこの国を、必ず次の世代に引き継いでいく。

 言葉ではなく、胸に直にそんな気持ちが伝わってくる。