助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 これまでもっと多くの何千人もの観衆の前で演説をした時も、臆すことはまるでなかったのに。
 体中から汗が噴き出した。参列者の眼光は鋭くベルナールの挙動に注目している。
(どうしてそんな目をする! 貴様たちは、私にこの国の行く末を委ねたのではないのか!)

 その中の半数近くが、事前にベルナール公爵への協力を申し出た者のはずなのに。
 あのような若者の言葉に影響され、彼がこれから成そうとすることを咎めているように見えた。

 そしてそれは、公爵自身もまたそうであるのかも知れなかった。ラルドリスは、あの国王の意思を継ぎ、この国をよりよいものにしていきたいとそう言ったのだ。もし彼が、あのターロフ王のように自分たちを率いて行ってくれるのならば……その事を誰よりも望んでいるのは、前国王に長く使えた自分たちであるはずだ。

 しかしそれが上手くいく保証はどこにもない……ならば変化など求めず、より長く経験を積んだ自分たちの手でこの国を保ち続ける。それが最良の……。

「バダロ……」

 ピンに触れる力を籠めようとした時、名を呼ぶ声とともに肩に大きな手が置かれた。