助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 伝手を辿り、再びザハールと会うには長い時間がかかった。
 息子は母よりその容姿を受け継いだものの、尊大に育ち、荒れていた。
 魔術師を自分の父などとは毛筋も思わず、下賎の血を引く者よと鼻で笑い罵った。
 だが、それでよかった。そうされることが、己の贖罪であると……魔術師は息子の手足となって身を粉にした。

 幸い、上の地位を望む者はどこにでもいる。頭の切れる娘も側に付き、彼が確実に王位に着くための計画は、着々と進んで行った。
 しかしそれも、もうすぐ終わる。最後にこの身を捧げ、敵対する第二王子を葬れば、自分の役目は、果たされる。

 魔術師はぐらつく視界の奥を見据え、片手を広げた。
 この命を犠牲にして、最後の魔術を放つのだと。

(終わりだ……)

 魔術師は、最後に、息子の表情を視界に収めた。壇上に立つラルドリスを忌々しそうに睨んでいる。寂しさで歪んでしまった、悲しい男。だがそれでも、この命を懸けるには惜しくない、たったひとりの愛する息子。

(なにも与えてやれなくて、すまなかった)