ザハールのことを魔術師が知れたのは偶然だった。たまたまマリアの出産に立ち会い、口封じのため多額の金銭を渡され城から離れていた医官に聞いたのだ。金に困っていた奴は、マリアが国王との逢瀬以前にすでに身ごもっていたことを知っていた。
そして同時に、マリアの死を聞かされた魔術師は大きな悲しみに暮れ、どうしても一度だけ息子に会いたくなった。国王に使える臣下の一人に口利きを頼み込み、城を訪れ、こっそりと彼の姿を見た。
彼はひとりで不満そうにしていた。瞳の先に映るのは、正妃が弟に惜しみなく愛を注ぐ姿だ。その寂しそうな背中が、忘れられなくなった。もう彼は、二度と母の愛情を受けられない。国王は忙しく、たまに顔を見せてはふたりの兄弟に平等に声を掛ける。魔術師は思った。平等ではならない……息子を誰よりも優先してやる者がいなければと。
名乗り出ることも考えた。しかしそれは、彼のたった一つの特別を、第一王子であるという地位を奪うことに他ならない。彼自身だけには、絶対そのことを明かすわけにはいかなかった。
……彼の一番欲したものが永遠に手に入らないなら、それ以外で埋めてやるしかない。だから魔術師は、自分が父であることを隠したまま支援し、ザハールを玉座に付けることを決意した。
幸い、魔術師には力があった。魔術という秘伝を受け継ぐことで、取りたてられた家柄。後ろ暗い役割を持つおかげで表舞台には出れない卑しい家系。
そして同時に、マリアの死を聞かされた魔術師は大きな悲しみに暮れ、どうしても一度だけ息子に会いたくなった。国王に使える臣下の一人に口利きを頼み込み、城を訪れ、こっそりと彼の姿を見た。
彼はひとりで不満そうにしていた。瞳の先に映るのは、正妃が弟に惜しみなく愛を注ぐ姿だ。その寂しそうな背中が、忘れられなくなった。もう彼は、二度と母の愛情を受けられない。国王は忙しく、たまに顔を見せてはふたりの兄弟に平等に声を掛ける。魔術師は思った。平等ではならない……息子を誰よりも優先してやる者がいなければと。
名乗り出ることも考えた。しかしそれは、彼のたった一つの特別を、第一王子であるという地位を奪うことに他ならない。彼自身だけには、絶対そのことを明かすわけにはいかなかった。
……彼の一番欲したものが永遠に手に入らないなら、それ以外で埋めてやるしかない。だから魔術師は、自分が父であることを隠したまま支援し、ザハールを玉座に付けることを決意した。
幸い、魔術師には力があった。魔術という秘伝を受け継ぐことで、取りたてられた家柄。後ろ暗い役割を持つおかげで表舞台には出れない卑しい家系。



