助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 その輝く笑顔を、ずっと絶やさずにいて欲しい。
 きっとそれは、皆を安心させてくれる。たくさんの人々の道を照らすかけがえのないものだから――。

(戻らなきゃ……)

 力の抜けていた指先に、感覚が戻ってくる。モノクロに褪せかけていた視界で、再び自分の身体が色づく。されど……手を伸ばせど伸ばせど、触れるものはない。まるで重みのない液体の中浮いているようで、メルは喉を掴み喘いだ。
 苦しい。手ごたえはないのに、抗えば抗うほど、肺の中の空気が目減りしてゆく感覚。
 けれど、メルはやめなかった。希望が見えなくても、ひたすら手足を振り回した。

(今度は、諦めない!)

 どれだけ苦しくても、遠くても……目の前で失われゆく大切な繋がりを断たせないために……。
 ふっ――と、体が軽くなったように感じた。

(あっ……)