誰も居なくなり部屋が静まり返る……。

「チチュ?」

 その後、カーテンの影から出て来たチタは、地面に飛び降りると、転がっていたひと欠けのナッツを拾った。
 実は……大きな音を立てて宮女たちを脅かしたのは彼が落とした、頬袋にいつも常備しているおやつナッツのひとかけだったのだ。
 それを食べ終えるとチタは鏡台の上に上がり、人気のなくなった一室でお目当てのものを発見する。

「キュッ!」

 台の上に放置されていた櫛になんと、宮女たちの髪が絡みついている。
 チタはつぶらな瞳をまたたかせ、嬉々としてそれを抜き取るとクルクル腕に巻き付けた。幸い、部屋を見渡せば、空気の入れ替えのために取り付けられた小さな穴が、壁の隅に空けられていて、そこが外と繋がっていそうだ。

「キュッキュ、キュッキュ……」

 チタはそこに柔軟な身体を潜り込ませると、毛皮が汚れるのも厭わず這い進んだ。
 メルの笑顔と両手いっぱいのクルミはもうすぐだ。