助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね



 まんまと室内に入り込んだチタは、短い手足を動かし、ちょこちょこと壁際の足つき戸棚の下に滑り込む。

 あの時メルは思念――イメージの共有を行う事で、チタに頼みごとをしていた。宮女たちの爪や髪と言った体の一部をなんとか手に入れてくるようにと。だがチタとて、例えメルの頼みでもただでは動きたくない。帰って来たら、食べ切れないくらい山ほどのクルミを与えてもらうと聞かされ、彼女の袖を飛び出したのだ。

 中にいるふたりはさすが城勤めの宮女。部屋は徹底的に整頓されており、毎日拭き掃除までしているのか、床には埃一つない。これでは困ったことに、証拠の品は集められない。
 チタは気づかれないよう影から出ると、戸棚の側面を駆けあがった。

 眼下では、宮女たちが深刻な表情で話し合っている。

「……いったいどうしますの。もしラルドリス様が今回の件の真偽を突き留めたら、私たちは処罰を受け、ここにいられなくなるかもしれませんわ」