「意外とそれっぽいですよ」

 直接褒めるのは恥ずかしくって言葉を濁したメルに、ラルドリスはがくりと頭を揺らした。

「なんだそりゃ。まあいいか、とりあえず飯でも食おう。専用の場所に用意させた」

 ラルドリスは顎をしゃくると先に立ち、メルは後ろに続く。さして背が高いわけでは無いけれど……育ち盛りの年齢だ、これからもう少し背も伸びるだろう。
 ――そうすればきっと、外見だけは少なくとも、民から一目置かれる立派な君主になるんだろうな。
 そんなことを考えながら、メルは一般の食堂とは別の部屋で、給仕が引いてくれた席に彼と共に腰を落ち着けた。

「毒見は済ませてあるようだから、安心して口にしていいぞ」
「お気遣い痛み入ります。それで、本日はどうします?」
「まずは母上の潔白の証明だな。側に付いていた宮女は幾人かいてな。そいつらにもう一度話を聞こうと思ってる」
「正直に話してくれない可能性もありますね……」

 ラルドリスは、給仕に並べられた銀食器を動かすことなく、丁寧に食事を始めた。当たり前なのかも知れないが、彼はこういった基本的な所作がとかく美しい。子供の頃から厳しく躾けられたことが窺える。