(あんまり動かないでね。くすぐったくて……)
(チュ……)

 チタは狭いのか不満そうにもぞもぞしていたが、やがて納まりどころを見つけたのか、動かなくなった。
 そこで曲がり角から、誰かが近付いてくる。

「おう、おはよう」
「ラルドリス様、おはようございます。あの……この格好おかしくありませんか?」

 軽く手を上げ笑顔を見せたのはラルドリスだった。後ろに付いた護衛の兵士は、昨日も顔を見せたボルドフの配下だ。こちらから彼の居室に出向くつもりだったのだが……。

「ふうん。なんだ、案外悪くないじゃないか、その恰好。似合ってるぞ」
「お世辞はいいですよ。あなたこそ……」

 言いかけて、メルは言葉を止めた。今日の彼は久々に着飾っている。色調は控えめだが上等の青いコートに、スリムな白のパンツ。こうした体格のラインに添う格好をすると、彼のスタイルのよさが際立ち、控えめに見ても格好いい。