助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 少し怖いけれど、こちらも威嚇するように睨みつける。送り出す前に最低限の義理は果たしておきたいからだ。

「一体、どの辺りまで戻られるつもりなんです? この森は簡単には抜けられませんよ、途中で迷ったら目も当てられないことになります」

 せっかく命を助けたのに、また行き倒れになられたりしてもメルとしても虚しいばかり。
 そう思っての問いかけに、彼は表情で不満を示した。

「目的地はそう離れてはいない。ナセラ森というと、王国の南西部に広がる森だろう? 俺が戻りたいのは……このフラーゲン領の領主である公爵の屋敷だ。ここから北西に三日も歩けば辿り着ける」
「三日ですって……? そんな簡単にいくもんですか! 深い森の中なんですよ!」
「うるさいな。これだけ太陽が出てるんだ。大まかな方向くらい影の差す向きで分かるじゃないか」
「いちいち目印になるものを探していてはあっという間に夜です! 獣もいますし、怪我が悪化して、身動きが取れなくなったらどうするんです! どうしてそこまでして……」
「関係も無いものには明かせない。しかし、本当に大事なことなんだ」

 考えなしの青年の言葉にメルは黙り込む。