『第二王子ラルドリス様がご帰還なされた! 民よ、道を開けてくれ!』

 東門の通行を制限し、隊列を組んだ部隊の先頭に立つと、一行の馬車を先導しながらボルドフは大きく触れ回った。彼がラルドリスを支持していることを民に大きく周知させるとともに、ザハール派に下手な行動を起こさせないための牽制の意味もあるのだろう。

 だが、住民たちの表情は歓迎している様子もなく冴えない。出戻りの王子が、今さらなにをという不信感が、そこらから感じられメルは肩を竦めた。

(彼は、どんな気持ちなんだろう……)

 こそっと、隣に座るラルドリスの顔を窺い見る。
 彼は一心に城を見据えているように思えるが、唇は引き結ばれ、表情は硬い。
 拳を強く固めている様からも、その緊張は推し量ることが出来る。
 彼はこれから母違いとはいえ、実の兄と戦い、この国の長たるものにふさわしいのだと、見せつけなければならない。そしてメルも実姉とまみえ、成り行き次第では大きく糾弾することになるだろう。彼女は我知らず、彼の拳の上にその手を重ねていた。

「ラルドリス様……私も怖いです。でも……」