助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

「――おい。あんた、さっきから立ちっぱなしでどうかしたのか?」

 訝し気な青年の声がハッとさせ、そこでメルは頭を下げた。

「……ごめんなさい、少し驚いただけなの。気分を害したなら謝ります」
「構わない。済まんが俺は……訳有って名と身分は明かせない。あんたは何者だ?」
「私はメル。ナセラ森に棲んでいる魔女です」
「魔女……ね。それにしては随分と若い」

 若いからなに――そう思ったメルと青年の瞳がかち合う。しかしその強い眼力に気圧され、彼女はもう一度目線を床の上に落とした。

「まだ、見習いのようなものでして。本当に魔女と認められていた祖母は亡くなりました」
「そう……か」

 青年の目の光が申し訳なさそうに和らいだが、彼はゆっくりとその場に立ちあがると、命じるようにメルに言葉を掛けた。

「それよりも、上着を持ってきてもらえるか。すぐにここを出て、屋敷に戻る」