「うむ、出来る限りの便宜を図らせてもらおう。といっても、こんな場所では大したもてなしもすることができぬがな。さて……」

 ボルドフはうんうんと頷くと、部下にすぐに食事を用意するよう伝え、同時に一旦人払いをさせた。

「さて、ラルドリス殿下。改めてあなた様の意思をお尋ねしたい。こうして戻られたということは、第一王子ザハール様を退け、王位を継がれる決意をされたと思ってよろしいのか?」

 彼は鋭く目を細めてラルドリスと向かい合い、不遜ともとれるような厳しい口調で尋ねた。巨漢から放たれる圧力は、並大抵の人ならば、睨まれただけでその場に膝を崩しそうな、そんな迫力がある。
 しかし、ラルドリスはまっすぐに彼を見返し臆面もなく告げた。

「無論だ。俺はザハールにこの国を渡さない。まだ俺にはなんの力もないが、支持してくれる人たちはいるんだろう? ならば、少しずつでも彼らと意見を交わし、共に国を栄えさせる手立てを考えていきたい。そして、皆がここに住んでいることを誇れるような、そんな国にしていきたいと思ってる」
「本気で、この国を背負われるお覚悟があるのですな?」

 半端な気持ちでは務まらないと言いたいのだろう、ボルドフは大きく距離を詰めさらに強くラルドリスを威圧した。しかしそれに怯む様子もなく、目の前の王子は言った。