「ええ」
「なら、任せたぞ」

 力強く答えたメルの肩に手をやり、前に送り出すと、ラルドリスは後ろを向いた。

「ぐ……ぬぅ。悪あがきをしよって」

 爆発で倒れていた幾人かの兵士や、小隊長がそろそろ起き上がって来ている。
 シーベルはもう立ち上がれそうにない。彼らを相手するのはラルドリスの役目になる。

「シーベル、剣を借りる。さあ、やるぞメル!」
「はいっ!」

 威勢のいい声を上げ兵士と剣を交わし始めたラルドリスに後ろは任せ、メルは魔物に視線をやった。今も魔物の身体は、どこかところどころが不安定に膨張と収縮を繰り返している。周囲の土や塵といった物質をもとにした、仮初の肉体。

(あれはきっと、器を借りた負の思念の塊なんだわ……。きっとそれを現世に留めるための核となるものが、体の中にあるはず。それを壊さないと……)