そこから淡い緑色の光が波打ち、全身へゆっくりと広がってゆく。
 祖母から教わった、魔女としての魔法。森に住まうものたちの力を借り、自らの身体を強化したのだ。

「……よい、しょっと!」

 そして彼女はおもむろに彼の身体を背負い上げ、リュックは肩に掛ける。
 背丈の大きさから青年を完全に担ぎ上げることは叶わないが、高価そうな靴のつま先が磨り減るくらいはこの際我慢してもらおう。

「よし。それじゃ戻ろ、チタ!」
「チュッ!」

 メルの号令に応え、チタはリュックのポケットにしゅぽんと入り込んだ。それを確認し、メルは歩きづらそうにえっちらおっちら青年の身体を引きずってゆく。

 拾われっ子の自分がまた、この森で誰かを拾うことになるなんて――。
 それがちょっとした因縁にも感じられ、メルはこの数奇なる巡り合わせに呆れながら、今来た道をゆっくりと引き返してゆくのだった。