絶対的な窮地に汗を流す中、取り囲む王国兵たちの間から彼らを率いる小隊長と思しき人物が進み出てきた。

「ラルドリス殿下、それにフラーゲン卿……。あなたがたを城に戻らせるわけにはいきませんのでな。ご覚悟を!」

 剣を構えるラルドリスを背に回し、シーベルは説得を始めた。

「待たれよ。ここで我々を始末しようと、ザハール王子の差し金だということはすぐに広まる。そうなれば殿下の配下はやすやすと彼に従わず、この国が乱れ多くの民が苦しむのだ。あなたもこの国を守る者のひとりだろう? ならばそれを防ぐためにも、どうかここは我々が王都に入るのを、黙って見逃してくれないか? もちろん、当家からも十分に礼はする」

 ここで下手に出れば、弱気ととられかねない。シーベルはしっかりと小隊長を見据え、きっぱりとした口調で告げた。だが、それでも小隊長は、態度を翻さない。

「……くくく、有難いお言葉ですが、今や、このような状況に陥っているお二方がその約束を守れるとは思えませんな。正義や大義などよりも我々には目先の手柄が大事! 者ども、こやつらを討ち取れ! さすればザハール様のお力で爵位も恩賞も望むままだ!」
「「ウオオオオォッ!」」