荒々しい蹄の音が、いくつも大地に響き渡った。

「あそこに見えるは第二王子、絶対に逃がすなっ! ザハール様の命だ、しくじると我々の命も危ういぞ!」
「オオッ!」
「不味いですね……」
「くっ……引き離せんか! やるぞっ!」

 押し寄せる王国兵たちに、並走するふたりは足を止める。
 乗っている馬の疲労も限界だ、このまま駆け続けさせてもどこかで潰れる。
 そう判断したラルドリスたちは、武器を手に背から飛び降りた……。

 ――ラルドリスたちがルシェナの街を発って翌日。
 
 予想以上の兵を動員しそこかしこに用意された検閲や王国兵の巡回に、ふたりは大いに苦しめられていた。
 シーベルの機転と、街で仕入れた煙幕などの小道具のお陰で、都度なんとか追跡を振り切ってきたものの、しかしすべては躱し切れず……ついに彼らは捕捉され、追い詰められてしまったのだ。
 馬を走らせながら抵抗し、ラルドリスの剣やシーベルの弓で何騎かを落としたものの……敵方との距離はどんどん狭められ、ついにふたりは戦うことでしかこの場を切り抜ける方法がなくなってしまう。