助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 おそるおそる覗き込むと、どうやら息はあるようだ。首筋に触れるとまだ温かく、胸は上下し浅く呼吸をしている。痛みか疲労かで気を失っているその様子に、メルは天を仰いだ。

「ったくチタ、とんでもないものを見つけてくれたわよ……。でも、見ちゃったものは仕方がない、か……」

 メルは首を横に振って弱気を追い出すと、青年をもたれていた茂みから地面に寝かせ、服を脱がす。なんだか自分がとてもやましいことをしているようで、冷や汗が身体に浮かぶ。
 青年の肌はとても綺麗で、ほとんど見たことの無い男性の上裸にくらっと来るが、幸い傷はそこまで深くはなかった。流れている血さえ止まれば、命に別状はなさそうだ。

 メルは手持ちの綺麗な水で肌を濡らす血を流し、布で拭くと血止めの軟膏をたっぷり塗りつけた。包帯をぐるぐると巻いて元通り上着を着せ、血がべったりついたシャツは、とりあえず持ち帰ることにする。
 さて、こうなると彼をどうやって小屋まで運ぶかだが……静かに横たわった彼を前にメルは目を閉じ、精神を集中。唇を小さく動かした。

「『大猪の魂よ……我が体に宿り、その剛力をしばし(ふる)いたまえ』――」

 まじないの言葉と共に、メルは自らの胸に手を当てる。