助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

 けれどチタもむざむざ自分から危険に近付くことはしないだろう。
 ここまで来てしまっては気になるものも気になるし……メルは用心しつつ後ろに続いた。

「キュウ……」

 小さな背中が一つの茂みの前で立ち止まり、メルの身体に駆け戻ってきた。
 その仕草には怯えが……。そしてそこまで着くと、彼女にも血の匂いの発生源が見えた。

「ひ……、人だ……」

 一人の青年が、血を流して倒れている。
 うっと顔を背けた後、じりじりとそれを引き戻しおそるおそる片目を開ける。
 彼の身体は美しい絹の上衣ごと、肩口から腰に掛けて斜めに切り裂かれていた。
 メルは悲鳴を上げそうになるのを堪え、にじるように男性の前に寄ってゆく。

「し、死んで、ないよね?」