機嫌を損ねた時のことを思い出したか、懲り懲りだとラルドリスは背中を震わす。しかしそれも一瞬後には笑顔に戻り、彼はメルと顔を見合わせた。

「じゃあ、案内してくれ」
「はいはい。ではまずはご所望通りお腹を落ち着かせましょうか」

 元気づけてくれたお返しだ。いずれ来る彼の大変な未来のために、ひとつでも楽しい思い出を……。
 そう思うとメルはラルドリスの腕を引き、非日常を演出する賑々しい街並みへと紛れ込んで行った。