助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

「狼や猪が出ないといいけどね」

 そう言いながらメルは黒いとんがり帽子を目深に引き下げる。こうしておけば、魔女っぽさが出て薬を売る時も舐められずに済む。祖母に教わったことだけど、らしさというのは案外大事な要素なのだ。

(久しぶりに新鮮な卵や肉、チーズなんかを買って帰ろう。後金釘と、こないだ頼んどいた薬壺、できてるかな……)

 考えごとをしながらてくてくと森の中の道なき道を進む。ここに住み始めた当初は迷うこともあったが、何かあっても、必ず祖母が見つけてくれた。
 何度か小屋と街とを往復し、自分なりの目印を作れば何とかなってくるもので。特徴的な木のうろや、よくキノコの生えている岩など、目に付く物はいくらだってある。今ではもう、どこからだって帰りつける自信はあった。

「ふんふんふふ~ん……ふんふふん」

 秋深く、踏みしめる度に乾いた音を立てる落ち葉をの上をリズムよく、途中から鼻歌交じりに一時間ほど歩いていると……。

「チチュイ、チチッ」
「どうしたの?」