兵士は手近なテーブルに家族の荷物を置かせ、その中を探ってゆく。
 あるのは食料品や寝具、着換えなどの一般的な旅支度だ。

「む……これは?」

 その中に妙な手触りを感じ、兵士はそれを摘まみ出した。

「こいつは……馬車か?」
「あっ、それは……」

 兵士が取り出したのは、小さな木の模型だった。アルクリフ王国の紋章が入った精緻な馬車に、馬の模型も二つ揃っている。まるでそれは、本物のごとくよく再現されていた。

「ほぉ……よく出来ているな。まるで生きているかのようだ」
「し、知り合いに腕のいい木工職人が居まして。息子の宝物なのだ……です」
「ん?」